闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『脳男』首藤瓜於

 現在公開中の映画の原作にして、2000年の第46回江戸川乱歩賞受賞作。連続爆破事件の容疑者として逮捕された、感情のない謎の男。彼は何者なのか。そしてその狙いは何なのか……?
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 愛宕市で起きた連続爆破事件。その被疑者・緑川のアジトで、緑川ともみ合っているところを逮捕された男・鈴木一郎。彼は逮捕後、警察が掴んでいもいなかった新たな爆弾の存在を供述していた。鈴木が緑川の共犯者であることは疑う余地はなかった。しかし刑事の茶屋は、逮捕前後の鈴木の言動が、緑川の共犯者にしては不自然だと感じていた。茶屋からそのことを打ち明けられた鈴木の精神鑑定を担当する精神科医・鷲谷真梨子は、鈴木がいったいどういう人間なのか、その素顔を探ろうとする。
 


 映画を見ずに、この小説を先に読んでいたら面白かったんだろうなあ、という感じの作品。映画を先に観ているので、どうしても映画と原作を比べてしまうのですが、この『脳男』の場合、映画が原作から変更した部分が、非常にうまくはまっているんです。映画では悪役の爆弾魔の設定と、ヒロインである真梨子のキャラクターとしての背景を変えたことが奏功していて、爆弾魔のサイコっぷりと、過去のトラウマと向き合う真梨子の葛藤が映画の緊張感を高め、観客の気持ちを惹きつけることに役立っていました。
 その点、原作の方は爆弾魔・緑川の描写は全くなく、真梨子の葛藤も映画版とは深刻さの度合いが異なっているので、どちらかというとこの小説の興味は、“脳男”鈴木一郎が何者で、何をしようとしているのか、とう点に重きが置かれています。ですが映画を先に観てしまうと、一郎の過去やその目的に関することはだいたい判っているので、その辺りの意外性とか、驚きというのがない。いちばんの売りであるクライマックスの病院内でのアクションも、映像で迫力あるアクションを観てしまうと、文章ではどうしても見劣りする。あくまでも娯楽性を売りにしたサスペンス小説で、高邁な思想や哲学的なテーマを描くものではないので、原作以上に娯楽性の高い映画を先に観てしまうと、原作の面白さが目減りしてしまうのは致し方ないでしょう。

 それでも、あくまで娯楽作として読めば悪い小説ではないと思います。文庫で365ページという、比較的短い小説で、スピーディーに展開していくストーリーは読んでいてだれることはないでしょうし、真梨子がアメリカで経験した出来事を回想する場面では、映画ではあまり強調されなかった、善と悪の線引きの難しさを考えさせます。
 ただ、小説中に鈴木一郎の主観で描かれる場面があるのですが、これは必要なかったんじゃないかなあ。一郎の感じていることや身体感覚、過去の記憶などが中途半端にさらされるのですが、それらが真梨子や茶屋に伝わるわけでもなく、また読者がこの小説を楽しむ上で必要な情報とも思えない。むしろ一郎の主観的な認識や感覚は、読者には全くわからないほうが、正体不明の“脳男”がより不気味に、それゆえに魅惑的に映ったと思います。

 ラストシーンは明らかに続きを匂わせる形で終っていて、実際に続編小説が出ています。第二作で“脳男”鈴木一郎がどのような活躍を見せるのか、そして彼に感情は芽生えるのか。興味深いので、近いうちに続編も読んでみたいですね。
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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
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