闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『作者不詳 ミステリ作家の読む本』三津田信三

 三津田信三氏の初期作品群、いわゆる〈作家三部作〉の第二弾。古本屋で見つけた奇妙な同人誌『迷宮草子』をめぐる、謎と恐怖の一週間を描く。
作者不詳 ミステリ作家の読む本 (上) (講 談社文庫)作者不詳 ミステリ作家の読む本 (上) (講談社文 庫)
三津田 信 三

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 親友の飛鳥信一郎が、古本屋で購入した『迷宮草子』という同人誌。いかにも素人が手作りで製本したような稚拙な作りの冊子で、内容も、小説なのか作者の体験談なのか分からない話ばかりが収められているだけ。古書的な価値などなにもないのだが、古書業界では、必ず思い出した頃に市場に出てくることで存在を知られた本なのだという。そしてある古書店主が調べたところでは、かつてこの本を所有していた人物が少なくとも二人、行方不明になっているとも。
 そんないわくつきの本を読み始めた信一郎と僕=三津田信三は、直後から 『迷宮草子』の内容に関連した怪現象に見舞われることになる。僕たち二人はこの怪現象から逃れるため、 『迷宮草子』に隠された謎を解き明かそうとする。


 作中人物たちが『迷宮草子』という作中作を読み、謎を解こうとする過程を読ませるという、入れ子構造のような作品。 『迷宮草子』は、作中では「未解決事件の記録」と表現されていますが、いわば解決編のない短編ミステリのようなものがたくさん収録されていて、作中の主人公たちはそれらを一話ずつ読んでは、答えを推理していきます。しかし素早く答えにたどり着けなければ、読んだ話の内容にまつわる怪現象に襲われ、あちら側の世界に連れ去られてしまうかもしれない。 『迷宮草子』収録作一つ一つは短編ミステリとして割と良くできているものが多く、それだけでも楽しめるもの。その一方で主人公たちを見舞う恐怖体験にも臨場感があり、所々は非常に怖い。 このホラー的な恐怖演出と、 謎を合理的に解釈しようとする謎解きの興味が上手く融合しており、とても面白く読めました。

 ところで、本作の下巻で、〈テン・リトル・インディアン型ミステリ〉という耳慣れない用語が出てきます。これはクリスティの『そして誰もいなくなった』に代表される、主要登場人物がすべて死んでしまい、犯人たりえる人物がいない(少なくとも読者にはそう見える)タイプのミステリに対して、作中の飛鳥信一郎が命名した(つまりは作者である三津田信三氏の)造語。例えば僕が最近読んだ 『『アリス・ミラー城』殺人事件』がそうだし、TVゲーム『かまいたちの夜』も、いわゆる皆殺しシナリオになった場合はまさにこの 〈テン・リトル・インディアン型ミステリ〉の展開になります。 それまでそんな意識して読んだことはなかったけど、そうやって定義付けしてひとつのジャンルとして括ると、じつはあの作品も、この作品もそうだったんだなと新たな気づきを与えてくれます。
 もっとも、こんな風に作品を細かくジャンル分けすることにどれほど意味があるのかという人もいるでしょう。ですが、個人的にはジャンルで括ることで、作者がその作品で表現したかったことが読みとりやすくなると思っているので、殊に先例を意識せざるを得ないミステリを読む上では、色々なジャンルを知っておくというのは、有意義なことだと思います。
 少し話が逸れましたが、本作の下巻に収録されている第五話「朱雀の化物」と第七話「首の館」の二作は、この 〈テン・リトル・インディアン型ミステリ〉として極めて優れた作例だと思います。この二作だけでも、読む値打ちはあるのではないでしょうか。

 ただ、一つ一つの短編はとても面白いのですが、『迷宮草子』全体の謎や秘密に関しては、少しメタ的趣向に走りすぎたというか、けっこううやむやなまま置き去りにされたようなところがあって、その点はやや、いやかなり不満です。上下巻に渡って800ページ以上も読んできた読者にしてみれば、あの結末はいくら何でも肩透かしに感じるんじゃないかな。
 それでも、前作で抱いた期待を裏切らないくらい、面白い小説だったことは確かです。これは確実に三津田作品にハマるな……と感じている今日この頃なのです。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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comments(0)|trackback(0)|読書|2013-07-18_03:58|page top

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
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