闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『実況中死』西澤保彦

 超能力者問題秘密対策委員会、略して〈チョーモンイン〉の出張相談員見習い・神麻嗣子と美人刑事の能解警部、推理作家の保科の三人が超能力絡みの事件の謎を解くシリーズの第二長編。
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西澤 保彦

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 主婦の岡安素子は、雷に打たれたことがきっかけで、他人の見た光景をそのまま見ることができる能力を身に着ける。しかもその“視線”の主は、どうやら複数の女性の後を付けまわしているらしい。素子は女性の身に危険が迫っていることを知らせるため、自分の見たものを手紙に書いてマスコミに投書する。担当編集者からその手紙を見せられた推理作家の保科匡緒は、文中に見覚えのある名前を見つけて驚愕する……。
 


 〈チョーモンイン〉シリーズの長編としては二作目で、本になった順番でも二番目に当たる本作ですが、シリーズとしては前作と本作の間で短編が何作か書き継がれているらしく、作品世界の中の時系列的にも、作品が書かれた順番に時間が流れているみたいなので、じつは前作と比べると、レギュラー登場人物たちの関係性なんかはけっこう進展していたりします。保科と能解警部の恋模様なんて予想以上に進んでいる(といってもいい大人同士の関係にしては、じれったいほど進んでいないのだけれど)ので、ちょいと面食らったりします。

 超能力の存在を前提としたSF本格という作品の性質上、論理展開がかなり複雑でややこしいので、ミステリとしての手がかりの示し方や伏線の回収がどれぐらい精密に行われているかは、再読して精査しないとなんともいえないです。が、一読しての正直な感想は「ちょっと、アンフェアじゃないの?それに少し強引かなぁ」というものでした。どこがどういう風にと書いてしまうと全部ネタバレなので、詳しくは書けませんが、事件の動機に絡む部分は少し不自然という気がするし、“パス(今回の超能力の呼称。自分の知覚が他人と繋がってしまう能力のこと)”の発信者である人物(作中では“ボディ”と呼ばれる)の行動や記憶に関する描写は、ミステリの描写としてはアンフェアすれすれ(僕個人の見解としては“ギリギリアウト”だと思う)な感じです。ただ、そうはいっても随所に伏線は張ってあるし、特殊な構成のミステリでも、極力フェアであろうとする姿勢は感じ取れますが。

 また、本作は前作以上に、人物描写が巧みです。前作はほとんど保科視点の文章でしたが、本作では保科はほとんど家に籠もりっきりで誰とも会わないため、もっぱら事件関係者に事情を聞いて回る場面は能解警部視点の文章で書かれています。この能解警部の人間観察と観察対象に対する分析がなかなか鋭いのですが、ちょっと極端な性向を持った人物たちも前作と比べると「ああ、こういう人は現実にいるな」と思わせる人物造型がなされているため、能解警部の鋭い視線と分析が、よりいっそう読み応えのあるものとなっています。
 そしてそんな鋭い能解警部が“保科匡緒との恋”に対しては完全に平常心を失ってしまうシーンや、それに対する保科のリアクションなど、思った以上に情緒的なシーンもあって、しんみりさせるところも読みどころ。また、前作でもそうでしたが、ジェンダー的な問題に対してけっこう考えさせられたり、ハッとするような指摘があったりする点がすごく興味深く感じるのは、僕自身が大学でそういうテーマを多少かじったせいもあるんでしょうが、軽いコメディタッチのミステリにあって、いい意味で異質な印象を残します。

 結論としては、ちょっとアンフェア気味なところが気になるものの、キャラクター描写が魅力的で、シリーズ作品としてはとても面白く読めたということ。このシリーズはけっこう数が出ているので続きも速やかに読んで行きたいのですが、初期の作品はほとんど絶版になっていて、書店では手に入らないというのが非常に悩ましいところです。地道にネットと古本屋を探すしかないですね。
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西澤保彦  『実況中死』 感想
実況中死―神麻嗣子の超能力事件簿 (講談社文庫)西澤 保彦 講談社 2003-11売り上げランキング : 128095おすすめ平均 《神麻嗣子》シリーズの第二長編なるほどこれは怖いなぁ、なんていう

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覚えてないなあ
この作品はかなりの強行スケジュールの中読んだので、どの作品よりも記憶が曖昧。。確か視点が実は××だった、ってな話だったよね。緻密な構成、という意味では前作に劣るけど、人を魅せる物語として良いよね。

このシリーズは確か、三作目と五作目~は全て短編で、割と軽く読める作品が多くなります。長編にはない長所もあるので、ご一読をオススメします。
確かに、記憶には残りにくいかも。
>>峰川幸介三世さま。
毎度コメントありがとさん。
真相を理解するだけでもけっこう大変な話なので、読み終えてから、後々まで記憶を維持するのは難しいでしょうね。

>確か視点が実は××だった、ってな話

視点が、というか超能力の発信地点が××だったって話ね。だけど、その人がそういう行動を取っていたことが作中で一切触れられてないのは、少しアンフェアじゃないかなぁと思う。
ただ、やはり巧みな人物描写とジェンダー論的な話が面白く、読後の印象はそんなに悪くないです。

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Author:tamacat
行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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