闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『無貌伝~人形姫の産声~』望月守宮

 無貌伝シリーズ第三弾。大学生だった秋津と遥が、苦難を乗り越えて結ばれる過程と、宿敵・無貌との運命的な出会いが描かれる一編。
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 「人形を見せてあげる」
 大学生の秋津承一郎は、友人の岬遥に誘われ、彼女の実家を訪れる。そこは湖に浮かぶ島に建てられた洋館で、数多のヒトデナシが封印されているという。島について早々、遥は姿を消し、秋津は一日の記憶を失くしていることに気づく。そして、島で出会った5人の男たちと、幼き日の遥を模った5体の人形。やがて男たちはヒトデナシの力によって次々と命を吸われ、そのたびに人形たちに命が宿る。秋津は姿の見えない遥の身を案じながらも、事件の謎と、その背後にある島の秘密に迫っていく。
 


 シリーズ第三弾ですが、内容的にはシリーズの前日談と言える本作。無貌に顔を奪われる前、若かりし日の秋津承一郎の姿を描いています。後の事件に直接繋がるような描写はなく、無貌との出会いもただ“出会ったこと”が描かれるだけなので、前二作との繋がりは薄く、番外編のような感じです。

 登場するヒトデナシが非常に多いですが、実質的に事件のキーとなるのは、生命と刃のヒトデナシ、一初瀬(ひとはせ)のみ。この一初瀬は、命あるものから命なきものへ生命を移動させるという能力があり、これによって5体の人形たちに命が与えられます。人間でもヒトデナシでもないが、命を持ち人語を話し、自分の意思を持って行動できる人形たち。彼女らは普通にしゃべったり、食事をしたりしていますが、作中の描写によれば、体を形作る要素そのものが変化するわけではなさそう(命の宿った人形の体を、秋津が「固く冷たいもの」と感じる描写がある)なので、人形が食べたものは消化されないどころか、そもそも食べ物の通り道すらないのではと思うのですが、そもそもこの人形自体、ヒトデナシの力によって作られたものなので、案外通り道ぐらいははじめからあるのかもしれません。
 ともかく、人とヒトデナシに加えて、人でもヒトデナシでもない人形という存在が事件に介在するので、非常にややこしいのは確かです。事件の背後には遥とその母親が背負った悲しい運命が関わっていて、その辺りも含めて解明しなければいけない謎がかなり深く、幅広いこともあり、読み手にとっては理解しづらいことでしょう。それでも、最後にはすべての謎が繋がって複雑な背景がすべて明らかにされるので、ミステリーとして体裁を損なってはいません。

 ただ、本作の秋津が厭世的で人生に倦んでいるように描かれているのは、不満というか、少し疑問です。シリーズ一作目『無貌伝~双児の子ら~』での描写によれば、秋津が自分の無力さや探偵という立場・行為の無意味さに悄然となるのは無貌に顔を奪われた後のはずで、なのに無貌と出会ってすらいない段階で、同じようなことに悩んでいるのは、違和感があります。古村望を「探偵の若い頃にそっくりだ」と評した友人の溝口も、本作の時点ではそれほど探偵と長い付き合いではないようで、それなら溝口の知る「探偵の若い頃」は、望のような正義感が強いはねっかえりではなく、本作で描かれる厭世的で人嫌いな人物でなくてはならないはず。ただ、秋津と溝口の関係についてはいまだ明かされていないことが多いので、今後のシリーズで何か別の側面が描かれる可能性はあります。

 このシリーズを読んでいて感心するのは、荒唐無稽なファンタジーの世界を描きながらも、登場人物たちの苦悩や決断がきわめてリアルというか、人間や社会の核心的な部分を突いていると思えること。本作においても、遥の置かれた境遇は現実的にはありえないものですが、彼女の悩みや、最後に秋津とともに下す決断は、普通の人が自分と社会の関係に悩んだり、過去に囚われたり未来を不安がったりしながら人生を選択するのと同じこと。作者の望月氏は、人間を描くという点において、独自のスタイルながらも素晴らしい技術を持っていると思います。

 本作で秋津と運命的な出会いを果たした無貌ですが、無貌自身の言によれば、遥とは何度も会っているとのこと。しかし遥は覚えていない。この辺りの謎についても、今後のシリーズでの解明が待たれるところです。そして秋津と遥、望と芹、そして無貌の物語が、今後どのように展開していくのか。先への興味は尽きず、といったところ。シリーズの続きも読んでいきたいと思います。
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comments(2)|trackback(1)|読書|2014-03-01_19:01|page top

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ラストの巾裂が圧巻!!!
正直最後以外はあまり覚えていないのだ。
でも殺人事件に関しては、前作までと同様、ヒトデナシの超常現象を絡ませながらも、解決は至って論理的だった記憶がある。
動機についても同じだけど、それをギャグとさせない筆力と構成が見事。

気になったのは、無貌があまり悪人に描かれていない事、かな。
毎度コメント感謝。
>>峰川幸介三世さま。
論理的ではありますが、非常にややこしいですからね。読み終わったばかりの僕ですら、細かいところまでは覚えてない。読んでいけば解るんですけどね。

無貌は封印から目覚めたばかりで、まだ何もしてないですからね。後に最悪の犯罪者と恐れられるようになるとは、ちょっと想像できないですね。

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Author:tamacat
行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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