闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『瞬間移動死体』西澤保彦

 いわゆるSF新本格。瞬間移動能力を持った男が妻の殺害を計画するが、予想外のトラブルから事態は思わぬ方向へ……。
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西澤 保彦

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 人気作家を妻に持ち、ヒモ同然の暮らしを送る俺。そんな俺も、心ひそかに作家になりたいという夢を持っていた。その夢を妻が心無い一言で否定したそのとき、俺の胸に、妻への殺意が生まれる。俺は自分のもつある能力を使い、妻を亡き者にしようと計画した。妻がロサンゼルスの別荘で死んだとき、俺は東京の自宅にいる。そんな完璧なアリバイを確保して。しかしいざ実行というところで、計画外のトラブルが続発。やむなく計画を断念した俺の元に、妻からの電話。別荘のクローゼットで、男の死体が見つかったという……。
 


 いわゆるSF新本格、と冒頭にも書きましたが、本作は瞬間移動という、超現実的な能力を主人公が持っていることを前提に、きわめて精巧で隙のないロジカルな謎解きミステリを作り上げた作品です。主人公が作家志望である点や夫婦・男女関係に関して妙に深い考察や内省的な描写が多い点など、同じ作者の〈チョーモンイン〉シリーズに似たところがあります。本作のほうが〈チョーモンイン〉シリーズより前の作品なので、ある意味、これがシリーズの原型になっているとも言えるかもしれません。

 この手のSF新本格は最初にどんな超能力を設定するかが謎解きの質や面白さを大きく左右します。何ができる能力なのか。逆にできないことは何か。本作ではその設定が非常に上手いです。瞬間移動という夢の能力が、実際には様々な制約のためにで非常に使いづらいものになっている。そして能力の副作用で、まったく意図しなかったトラブルを呼び込んでしまう。そして最終的には、その超能力の特性ゆえに、不可解な謎に答えが出る。ただ主人公の殺人計画を困難にするためだけにあると思えた色々な瞬間移動の制約が、最後の謎解きに不可欠なピースとしてきっちりはまってくる。こういう精妙な構成は、さすがだなと思います。
 個人的に本作で好きなのは、主人公の〈俺〉こと和義のキャラクター。“縦の物を横にもしたくない代わりに、自分自身がずっと横になって過ごしていたいという怠け者”と自己評価する彼のその怠け者特有の生態というか独特の行動特性みたいなものが、非常にリアルです。“怠け者という奴は、怠けるためならば、それこそ血が滲む努力も惜しまないものなのだ”という辺り、これは本当に怠け者のことをよくわかってる。もしかしたら作者は怠け者なんじゃないだろうか?なんて思ってしまいます。そもそも〈怠ける〉ということは一般的な価値観では良くないこととされていますから、怠け者であり続けるということは、それだけで周囲からの冷たい視線にさらされたり、けっこう大変なんです。だから、まあ血が滲むは大げさにしても、怠けるために苦労するというのは、同じく怠け者である僕にはよくわかる。

 精妙な謎解きの面白さに加えて、本作では作中人物たちが結び合う、一種異様な関係性にも注目です。こういうある意味極端な人物像や人間関係を通して、人の心の深いところにある欲望やあさましさを描くというところも、後の〈チョーモンイン〉シリーズに通じるものがあります。西澤作品は意外と絶版のものも多くて、手に入りにくかったりするのですが、本書は2012年に新装版として再販されたもので、今のところは手に入りやすいと思います。超能力パズラーという、ちょっと珍しい世界の入り口とするには、本書はもってこいかも。まだ西澤保彦を知らない人に、是非勧めたい一冊ですね。もちろん、すでに西澤ワールドにはまっている人も、満足できる作品であることは間違いありません。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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comments(0)|trackback(0)|読書|2014-05-28_02:44|page top

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
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