小説『暗黒館の殺人』

 綾辻行人の「館」シリーズ、最長の作品にして、ある意味最大の問題作。シリーズの集大成でもあり、また時空を超えて、シリーズの《始まり》を告げる作品でもあります。
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綾辻 行人

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 「文庫版あとがき」を読むと、作者本人はたいそうこの作品がお気に入りの様子。そりゃまあ、前作から12年、時間も労力もかけた大作、愛着もあるでしょうが。しかし、これはないぜ、綾辻さんよ、と言いたくなる。


 
 まあ、あまりネタばれもできないので詳しくは書けませんが、とりあえず長い。作品は長すぎる、館は広すぎる、登場人物は多すぎる。サイドストーリーが多すぎて、肝心の殺人事件の謎解きになかなか集中できません。その事件そのものは、なんかえらく地味。殺人事件よりも、サイドストーリーの方が立っているというのが、『暗黒館の殺人』というタイトルにはそぐわない感じで、不満を感じます。
 サイドストーリーにも謎がたくさん散りばめられていますが、こっちの処理は「それでいいのか!」と言いたくなる。論理の城たるべき本格推理小説で、不思議なことを不思議なことのまま放り出すってのはいかがなものか。『水車館の殺人』のラスト(未来に起きる事件と、その犯人を予知したような絵が出現する)ぐらいの不思議なら、雰囲気もあるし、べつにいいですよ。でも、この『暗黒館』で放り出されている不思議は、あまりにも数が多すぎることと、事件の謎解きの過程でも一度言及されている、つまり謎解き上絶対に潰しておかなければいけない可能性まで放置しているという部分で、「そりゃないだろう」と言いたくなるのです。

 ただ、どんなに不満があるといっても、この作品は『館』シリーズファンなら絶対に読まねばならぬ作品です。先にも書いたように、この作品は、シリーズの《始まり》を告げる作品でもあるから。作中で起きる殺人事件よりも、むしろ《そのこと》の方がこの作品の本題ではないかとも思えるのですが、シリーズのキーマンであるあの人物の《正体》が、かなりの部分明かされるのです。シリーズ7作目でありながら、この作品を読まずして『館』シリーズは語れない、そんな作品になっています。
 賛否両論渦巻く問題作ですが、ともかくこの《始まり》の物語を経て、このシリーズはなおも続きます。全10作の予定というシリーズ、本作のあと、『びっくり館の殺人』が8作目として出ていますから、残るはあと2作です。江南孝明や鹿谷門実、そして異様の建築家・中村青司の物語はこれからどこへ向かい、どのような終結を迎えるのか。ここまで付き合ったからには、最後まで付き合うしかなさそうです。
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テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌

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