小説『新装版 長い家の殺人』

 歌野晶午のデビュー作。島田荘司の推薦によってデビューした、新本格ムーヴメント最初の波を担った一人である歌野晶午ですが、僕は初読です。はたしてどんな作家なのか、予備知識もほとんど無いまま読み始めました。
長い家の殺人 (講談社文庫 (う23-11))長い家の殺人 (講談社文庫 (う23-11))
歌野 晶午

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 大学生バンド「メイプル・リーフ」が練習合宿に訪れた宿泊施設「ゲミニー・ハウス」で、メンバーの一人、戸越伸夫が殺された。しかもその死体は、殺害現場から十数時間にもわたって消失していた。この不可解な謎の前に警察の捜査も難航する中、「メイプル・リーフ」の解散ライブの最中に、またもメンバーの三谷真梨子が殺される事件が発生。このときも死体発見までの約十五分間、真梨子の姿は完全に消えていた……。


 
 島田荘司氏は「まれに見る傑作」「この小説に現れるトリックの大胆なアイデアは、ミステリー史上に遺ってもよい」などと大絶賛していますが、それほどのもんか、と。文章の巧拙とか、キャラクター造形、ストーリー構成の稚拙さとかは、処女作ということで(作者はこの作品を書く以前は、習作すら書いたことが無かったそうなので、本当の意味での処女作)問わないとしても、最大の売りであるべきトリックも、なんだかなぁ、という感じです。これは小説というジャンルの弱点でもありますが、「薄暗い」と書いてあっても、実際にどれくらい薄暗いのかは文字だけでは伝わらないですよね。この作品のトリックを実際に行う場合、相当暗くないとトリックが露見しそう。第二の事件でのトリックなんてもっと無理があるし、絶対バレるだろうって気がします。

 まあ作者自身、 「今の自分ならもっと良い作品に仕上げられる」と書いていますし、先に述べたとおり正真正銘の処女作なので、内容が未熟なのはいたしかたない部分もあるのでしょう。それだけに、逆にこの作品の印象だけで作家・歌野晶午の力量を測ろうとか、評価を決め付けてしまうというのは無茶なこと。最近では、『葉桜の季節に君を思うということ』で「このミス」一位を獲得するという快挙も達成しているぐらいですから、作家としての実力はデビュー以後、相当伸びているのでしょう。今回は「とりあえずデビュー作から」と思って『長い家の殺人』を読みましたが、今後、順を追って歌野作品を読んでいけば、作家としての成長をつぶさに追いかけていくような、そんな楽しみも味わえるかも知れません。ちょっと、やってみようかな。
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テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌

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